「御霊の実B善意」

A.生徒を愛したローウェル先生

 スーザン・ローウェルは、高給を得ていた仕事を辞め、高校教師となりました。問題を抱えた十代の子たちを助けてみたい、と思ったからです。赴任した初日、先生は、「これから何も見ないで、皆さんの名前を全部お呼びします。一人でも名前を間違えたら、今度の学科で最初のテストをしたとき、自動的に『A』の成績をつけてあげます。」と言いました。先生は、ゆっくりと机と机の間を歩きながら、一人ひとりの名前を呼んでいきます。そして、誰一人間違えることはありませんでした。クラス全員が、強い衝撃を受け、じっと先生に注目しました。ローウェル先生は「・・・みんな一人ひとりが大切な存在だということを知って欲しかったのよ。・・・」と優しい口調で話しました。生徒たちは 先生は、自分たちを信じてくれているのだと知ったのでした。

 これは、全米最大の教会の牧師、ジョエル・オースティン著『あなたの出番です!(上)』に載っていた記事です。ローウェル先生は、知恵をもって生徒に接し、善い業を行いました。御霊の実の六番目は、善意です。

B.聖書より

「私の兄弟たちよ。あなたがた自身が善意にあふれ、すべての知恵に満たされ、また互いに訓戒し合うことができることを、この私は確信しています。」(ローマ人への手紙15:14 新改訳)

 知恵とは、聖霊の働きで、神さまのお導きにより何をすべきかが示されることです。そして、強くて優しいイエス様の人格、生き方に近づかせていただくことで、人は強くて優しくなれます。

C.信仰と知恵と慈愛に満ちたキムさんの活躍

 クリスチャンのキム・ソン・アンナさんは、朝鮮で生まれ、父親の転勤で2歳の時、日本帝政下の満州・牡丹江に移りました。満州国では日本国民として女学校に通いますが、第2次世界大戦末期、侵攻してきたソ連軍を逃れ、北朝鮮経由でソウルに脱出しました。

 キムさんは1954年、ソウルで銀行員と結婚、69年から4年間、夫の転勤により日本で暮らすと、初めて韓国人への差別を受け、戸惑いました。そこで、特別に親切にしてくれなくてもよいが、普通に扱ってほしい、と話して回りました。

 1984年、キムさんは渡米し、米国市民となります。キムさんは現在、日本人・日系人を対象とした日本語での悩み事の無料電話受付サービス、「日系ヘルプライン」(命の電話)のコーディネーターとして活躍しておられます。「日系ヘルプライン」は1986年、超教派のクリスチャンの方々を中心にボランティアで始まりました。相談の内容は、移民局、ビザ、永住権、法律、犯罪関連、交通事故、離婚、子どもの問題、ドラッグ、病院、学校、教育など様々です。特に多いのが、国際結婚した日本人女性からの相談です。キムさんは愛情をもって説いていきます。それぞれ、互いの文化をよく研究することが幸せにつながるし、国際結婚のみならず、日本に育っていても、互いの文化背景を考えながら結婚生活を続けて行くと、破綻せずに済む、とキムさんは主張します。 20年間「命の電話」の働きを支え、仕えてきたキム・アンナさんは、平成19年、日本政府から叙勲、日系コミュニティーは計り知れないほど大きい恩恵をキムさんから受けています。キムさんは当初、「どうしてあなたは韓国人なのに日本人を助けることに一生懸命になっているの?韓国人は日本人を憎んでいるんでしょう?」とよく聞かれたといいます。キムさんは、一言「わたしはクリスチャンだ」と言うと、それで問答は終わるといいます。

 信仰と知恵と慈愛に満ちたキムさんの活躍を、日系社会はまだまだ必要としています。優しさをもって、時にはしっかりと真実を説くキムさんの態度こそ、第六番目の御霊の実、「善意」なのです。

D.結び

 時には、叱ったり、訂正したり、訓練したりするのが善意です。自分の使命に誠実に生き、全てのの行動に「愛」を加えましょう。

御翼2010年9月号その3より

 
  
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